私の古くからの友人の話をしよう。
彼のような経歴の男は、私の周囲に限らずそうはいないと思うので、その履歴をまず紹介させていただく。
1954年に大阪の開業医の長男として生まれ、自身も大阪歯科大学を卒業し歯科医師免許を取得。
1980年、歯科大卒業と同時に渡米。ロサンゼルスに移住する。
目的は、彼の地で歯科医師になることではなく、逆にそのキャリアを捨て無謀にも明日をも知れぬミュージシャンになることだった。
1982年、ミュージシャンズ・インスティチュート(MI)を卒業。
LAを拠点にプロドラマーとして活動を開始。ポピュラー音楽の本場で、多くのスタジオセッションを経験した。
1986年、音楽プロデュース活動を平行して始める。
私が彼と出会ったのは、この頃だった。
80年代の後半、ロスとニューヨークで多くのレコーディング・セッションを彼と重ねることになったのだが、音楽に対する妥協の無さは当時から私を驚かせたものだ。
1991年には、サザン・オールスターズの英語カバーアルバム“MID SUMMER BLOSSOMS”シリーズ3作を彼と組んで制作した。
レオン・ラッセル、フィリップ・ベイリー(EW&F)、ビル・チャンプリン(シカゴ)などそうそうたるボーカリストが参加したこのアルバムは、30万枚という大ヒットに。
それ以前から、アメリカでのレコーディングは全て彼にお願いすることに決めていたのだが、彼の作ってくるものは、常に私の期待を上回っていた。
次に彼の興味を惹いたのは、「自然音」。
ある日突然、バイノーラル・マイク(ダミーヘッドを使った3D録音マイク)と高性能録音機を担いで森や人里離れた渓流に分け入り、そこで奏でられている自然の音楽を録音し始めたのだ。
人が演奏する「ヒューマン・ミュージック」はどこまで突き詰めても完璧にはなりえない。
しかし、大自然が奏でる音楽は、唯一の「ゴッド・ミュージック」。全ての瞬間が完璧なのだと、彼は私に話してくれた。
収録してきた素材を音楽制作で培ったノウハウでさらに加工し、完璧な自然の音場を再現するのだが、そのクオリティーの高さは他と完全に一線を画している。
彼の名前は、ジョー奥田。
今では、自然音と音楽とのコラボレーションにも積極的に取り組んでいる。
現在、藤井尚之(サックス)、高橋全(ピアノ)と共にThe Nature Sound Orchestra(NSO)を結成、東京を拠点に精力的にライブ活動を行っている。
MARUIのライフスタイルブランド「インザルーム」のオリジナルCDなのだが、ネオ・クラシック音楽にジョー奥田の紡ぐ美しい自然音がはさみこまれている。
レコード店やアマゾンなどの一般ネット・ショップでは購入できないので、視聴も出来る「インザルーム」のネットショッピングのリンクを紹介しておく。
手前味噌のようだが、自信を持って一聴の価値は十二分にあると言える。
仕事に疲れた大切な人へのギフトにも最適。
きっと「世界でもっとも美しい音楽」に触れることが出来るだろう。