2009年09月12日

蒸発したままの雇用 増え続ける失業者

JFEスチールの高炉が間近にそびえる千葉市中央区のJR蘇我駅に近いハローワーク千葉南に、JFEと取引のある会社を半年前に退職した30代の男性が毎日、通い詰めている。

 リーマン・ショック後の急激な景気悪化は、素材、部品、製品の需要を世界的に蒸発させ、企業に生産調整や従業員の給与カットなどを迫った。正社員だった男性は給与カットを嫌い、退職を決めた。

 「その時はすぐにでも職が見つかると思っていた」。こんな後悔を口にする男性は、貯金を取り崩しながら職探しを続けている。

 ■求人倍率0.31倍

 雇用情勢が厳しさを増したのは「リーマン・ショック後の去年の後半から」(ハローワーク千葉南の津田早苗次長)という。製造業が求人の中心を占めるハローワーク千葉南では、求職者1人に対する求人数を示す7月の有効求人倍率が過去最悪の0.31倍を記録した。全国の0.42倍を大きく下回る水準だ。

 JR蘇我駅の近くで、30年ほど前から焼き鳥店を営む女性店主は「JFEの工場で下請けとして働く人がお客さんの中心だが、その人たちはいま週3日ぐらいしか仕事ができない」と顔を曇らせる。地元を本拠地にするJリーグサッカー場ができたが、客の入りにそう変化はない。「今までにない厳しさだよ」とつぶやきながら、網にかけているくしを返した。

 ■「やめさせない」

 金属加工の中小・零細企業を中心に約4600社が軒を連ねる東京都大田区に本社を構える工作機械メーカー、東京精機工作所。世界同時不況に経営を直撃され、創業以来初の赤字転落の危機に立たされている。

 「トヨタの売り上げが3割減ったが、われわれの売り上げは8割が吹き飛んだ」。小美野(こみの)正五(しょうご)会長の表情は硬い。

 日本工作機械工業界が8月に発表した今年1〜7月の受注額は1825億円で、前年同期の20.2%の水準にすぎない。日本企業の業績悪化を象徴するトヨタ自動車グループの世界販売台数は1〜6月で前年同期比26.0%減の356万4000台。比較すれば、中小企業が受けている衝撃の大きさがわかる。

 東京精機工作所は昭和36年の設立以来、技術力を武器に研削機、切断機などの工作機械を手がけ、太陽光発電に必要なシリコンインゴットの切断機、電気カミソリの内刃の研削機などを大手メーカーに納めてきた。とりわけ鋳物の表面をミクロン(1000分の1ミリ)単位で削り、高精度の平面を手作業で生み出す「キサゲ」では、「他社はまねできない」(大手電機メーカー)と評価が高い。

 今回の不況は、高い技術力を持つ中小企業にも津波のように襲いかかった。東京精機工作所では新規受注が激減したうえ、注文のキャンセルも相次ぎ、営業担当者は行き先を失った製品の転売先探しに明け暮れた。5月には創業以来初の休業に踏み切り、従業員の賞与はゼロにした。雇用調整助成金も申請した。

 仕事が8割減ったのだから、単純に計算すれば従業員は「半分もいらない」。でも、熟練工を含む約90人の従業員は「パートの一人もやめさせない」(小美野会長)という。人こそ力、と信じているからだ。

 「年内なのか、来年なのか。景気回復までじっと我慢するだけだ」

 小美野会長は覚悟を固める。業績にはこの我慢が反映されることになる。

 ■増え続ける失業者

 政府は6月の月例経済報告で「一部に持ち直しの動きがみられる」と底入れを宣言したが、失業者の増加は止まらない。

 7月の労働力調査によると、完全失業率は過去最悪の5.7%に達した。失業者数は1年前の256万人から359万人に増えた。失業者が1年間に100万人を上回るペースで増えた例は過去にない。失業理由で最も多いのが倒産、人員整理など「勤め先都合」の121万人となっている。

 ■第一生命経済研究所 熊野英生・主席エコノミストの話

 「経済には流れる部分と降り積もる部分があり、前者をフロー、後者をストックと呼ぶ。日本ではリーマン・ショック後に、米国やアジアとの貿易が止まったため、国内の生産活動が急速に悪化した。それが最近、少しずつ戻ってきたのだが、それはフローの部分に限られ、企業の操業度が元に戻ったわけではない。

 例えば、操業度100の企業がいったん50まで落ち、70までは回復したものの、元の100までは戻っていないようなものだ。このため、雇用調整の圧力は引き続き働くことになる。

 失業率は10月の統計ぐらいまで悪化が続くだろう。また、その後も高止まりするのではないか。

 新政権には、企業が海外の成長市場で収益をあげられるよう、先進的な設備への投資がしやすい税制上の優遇措置などの対応が求められるだろう。それらの政策が内需拡大に結びつくような、緻密(ちみつ)な成長戦略を描いてほしい」
Posted at 02:49 | この記事のURL | コメント(0) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
コメントを書く
名前:

Email:

URL:

クッキーに保存
  コメント:
太字斜体下線打ち消し線カラーパレット大得大小引用左寄せ中央寄せ右寄せURL絵文字

画像認証:下の画像に表示されている文字を入力してください。


コメント