プロ野球・楽天が絶好調だ。4日、西武に敗れたものの、球団史上初のパ・リーグ首位はキープ。本拠地・仙台では負け知らずで、地元は「もしかしたら今年は優勝?」と盛り上がる。「お荷物」とまで言われた楽天に、いったい何があったのか。
4日夜、前橋市での西武―楽天戦。地元仙台から離れた北関東での試合にもかかわらず、球場前の臨時グッズ売り場には楽天の野球帽をかぶった子どもたちが群がった。田中将大投手のグッズは試合前に売り切れ。スタンドの半分を楽天ファンが占め、えんじ色の集団が応援のために声を振り絞った。
「7連勝。黙って値段を3割下げたよ」
初の首位に立った3日。仙台市中心部にある青空市場「仙台朝市」で青果店を営む高橋正洋さん(42)はさっそくセールを始めた。「夕方なので奥様方が家ですぐ調理できる旬のものを」とレタス、トマト、キュウリを特売した。商売への影響もどこ吹く風。「楽天が勝てばお客さんが喜ぶ。地元が活性化し、景気も良くなる」と高橋さん。
同市にある東北一の歓楽街・国分町でおでん店を営む田村忠嗣さん(64)は、チームが勝つとホームベースやボールをかたどった「イーグル串」を1本サービスする。3日夜も惜しげもなく提供。常連客らは、イーグル串をさかなに勝利の美酒に酔った。
田村さんは地元の盛り上がりを「おらほ(自分たち)のチームを盛り上げようという気持ち」と話す。
楽天が仙台に来てまだ3年余り。しかし、昨年の4位浮上を契機に、急激に地元球団として定着し始めた。小学校のグラウンドで見かける子どもたちの野球帽も、半分近くがえんじ色になった。
高層ビルの建設ラッシュに沸き、トヨタ自動車などの大企業の工場進出が相次ぐ仙台の盛り上がりに、開幕4連敗からV字回復を見せた楽天の快進撃が拍車をかける。
楽天の本拠地クリネックススタジアム宮城で1日から、ロッテとの3連戦があった。12球団では唯一、平日のデーゲームだったが、収容人数約2万3千人に対し、初戦は1万927人。それが2日には1万4285人に増え、球場内の当日券売り場には2千人余りの行列ができた。3戦目は時折激しい雨が降る悪天にもかかわらず、1万5018人が詰めかけた。
球団は昨年から、4月上旬の主催試合をナイターから、午後1時スタートのデーゲームに切り替えた。4月の仙台の朝晩の冷え込みはまだ厳しい。ナイター戦だと、東京の真冬並みに冷え込む。開幕時期にナイター戦を行った05、06年には、毛布や温かい食べ物を求める声が相次ぎ、不評を買った。
その反省から切り替えたが、実は「春休み中の4月上旬なら、親子連れの需要が見込めるかもしれない」という読みもあった。背景には、子どものファンを増やすために、2年前から東北6県で開いてきた少年野球教室があった。選手たちの連日の活躍も最大の宣伝となり、スタンドには親子連れの姿が目立った。計算が当たった形だ。
宮城県ローカルのテレビの生中継も行われ、予想以上の視聴率をたたき出している。ビデオリサーチによると、3日の仙台地区の楽天戦の視聴率は13.2%だった。
中継した東北放送によると、テレビを見る人が少ない時間帯で、普段なら数%という。担当者は「連勝も相まって、関心の高さを感じる」とほくほく顔だ。
楽天は05年シーズンから、オリックスと近鉄の球団合併から漏れた控え選手中心でスタートした。
しかし、ドラフト会議では、甲子園を沸かせた田中将大投手(駒大苫小牧高)を06年に、長谷部康平投手(愛知工大)を07年に獲得するなど複数球団の指名が競合した有望選手を3年連続で引き当てた強運を見せた。
球団経営は球場改修もあり、06年度以降は年間10億〜13億円の赤字だが、地元の強いチーム見たさにファンが球場に足を運ぶという好循環が起き始めている。
選手たちが活躍し、07年に11勝をあげて新人王となった田中投手の登板日は、ホームゲームの観客が平均より1500人も多い。グッズの売り上げも年間10億円に達する。
プロ野球に詳しい池井優・慶応大名誉教授は「終盤までリードされても帰らずに応援する観客が、選手に最後まで一生懸命やる気にさせた。その地域密着の効果が表れてきている」とみている。
出典:朝日新聞