2012年05月30日

お子様サイズの恋〜こんな恋ってアリ!?〜 Final

Side/笑愛

「…考え、直して…よ…っ」
私は情けなく、ぐずりながら言った。

「…考え直してどうにかなる事なの?」
ピタッと止まって、遥斗が尋ねる。

「だって…遥斗の事、好きだけど…っ…まだ、こんなのしたくない…っ」

涙がどんどん私の頬を伝い流れる。

「…俺だって、余裕ない」
遥斗が呟く。

「…どんどん笑ちゃんが、愛しく感じれば感じるほど、笑ちゃんが欲しい。好きだって思うだけじゃ、足りなくなる……それは、いけないことなの?」


好きだから、一緒にいたい。
好きだから、抱き締めたい。
その気持ちは、一緒。

それに。

遥斗が離れてくのは嫌。
遥斗に嫌われるのも嫌。
私が嫌だって言っても、遥斗がずっと好きだって言ってくれてたから、今がある。
全部、遥斗のおかげなんだ。


それに、遥斗を失ったら…私はどうなる?
これを断ったら、遥斗は離れてくの?


「…いけないこと…じゃ…な…い…」
唇が震えて上手く言えない。

「は、遥斗が…望むなら…っ」
「…本気でいいの?」

遥斗が真剣に尋ねる。

「途中で止まらなくなるよ?笑ちゃんの事、めちゃくちゃにして、泣かせちゃうかも知れない。それを分かってて言った?」

遥斗は私の髪を指で掬(すく)うと、髪にキスした。

「…っ」

本当は怖い。
自分がどうなるのか分からないから。

「…ほら、怖いんでしょ?」
遥斗が優しく言った。

「…自分から笑ちゃんを欲しいだなんて、笑ちゃんを急かす真似なんかしてごめん」

遥斗は私を抱き締めた。

「まだ子供なのにいきがるな、って話だよね……でも、これで笑ちゃんが誰かにさらわれる事もない」

遥斗は私の首筋に付いた印を指差した。

「“ずっと俺だけのモノ”っていう所有印。これ見ちゃ、誰も奪えないでしょ?」
「…うん…」
「消えても、いつだって俺のモノだと証明してあげる」
「うん…!」


小さな、でも、私の心には大きな存在を残す王子様。
彼は幼馴染みで、アイドル。
でも私からしたら、最初はただの弟のような存在にしかなくて…。

でも、時々見せる可愛い所とか、男らしい所は、私に『愛しい』と思わせる。
年下でも男の子って意識させられる。

子供なのは私だ。
「年下だから」なんて決め付けて、遥斗の事見ようとしなかった。

初めから、大人なのは遥斗。
私が何言ったって折れないで、私にぶつかってきた。

「好き…っ」
私は言った。

「遥斗が好きっ!大好きだよ…っ!」
「俺の方がもっと好きだよ…」







−4年後−

『Cu-luに新メンバーが加わってから、三年。これからも一層頑張りますので、宜しくお願いしますっ!!』

朝のテレビの画面に遥斗や深斗くんたち、Cu-luのメンバーが映っている。

あれからCu-luに、深斗くんの他に四人の男女が加わった。

「遥斗くん、17歳になってから大人っぽくなったわねぇ〜」
お母さんが呟く。

「…あ。」

テレビ画面に映る遥斗の首に光るネックレスに気が付く。
ネックレスの飾りに、私とお揃いの指輪がぶら下がっている。

「何?」
お母さんも画面を覗き込む。

「何でもないよ」
私はあえて教えなかった。

「さ、仕事に行ってくるわ」
「行ってらっしゃい、笑愛。気を付けて行くのよ?」
「分かってるって!」


あれから4年。
私は21歳、遥斗は17歳になった。

私は高校卒業後、仕事を始めた。
遥斗は変わらず、アイドルの仕事を続けている。


『じゃあ今日も張り切って行くぜ〜っ!』




Side/遥斗

あれから4年。
進展…なし。
何も変わらず。
将来の話をしただけで終わった。

俺はアイドル続けて、笑ちゃんはそれを応援する、と…。
真面目な話なのに、真面目に終わった。

「あ〜ッ!!」
俺と灯理は同時に机をダンダン叩いた。

「うるさい。遥斗、灯理。イライラしてんならカルシウム摂れ」
月が言う。

「「うっさいなぁ!」」
俺達はハモった。

「お前ら年上に向かって、『うっさいなぁ』はないぞ…」
「ひっ!つ、月ちゃんごめんね!?」
「謝られても灯理だからウザい。」
「何それひどい!!」
「それより、灯理とバカ兄貴が結婚なんかしたら、灯理は私の姉か…年齢的に考えても嫌だな」
「ちょっと!嫌って何!?」

灯理はあれから、どうしてそうなったのか、月の双子の兄・日向と付き合っている。

「手が掛かるって事だよ」
月はそう言うと、隣に居た日向の椅子を殴った。

「おい!何で椅子を殴る!?」
黒崎兄が言う。

「まぁ…仕方ないから、しばらくは面倒見てやってもいいかな」
月はフッと笑った。

「ついに認めてくれたのか、月!?」
黒崎兄は月に尋ねる。

「灯理はね。兄貴は私の兄貴だとは認めてないからな」
「月!?ひどいよ!?」
「ひどくありません。認められたいなら、頑張んなさい」
「上から目線だねぇ、月ちゃん」
「やっぱり灯理も認めない」

月はプイッと外を見た。

「…さ、今日も一日頑張るぞ!」
白石さんが言う。

「おーっ!!」
俺達Cu-luは叫んだ。

「…な、遥斗。聞いてくれよ」
衣羽がコソコソと俺に話し掛ける。

「何だよ」
「俺、高校卒業したら、由梨絵と結婚することになった」
「は、はぁあっ!?」
「しっ!声でかいって!!」
「悪ぃ。でも、マジなのかよ」
「マジだって!」

あわよくば、俺もいつか笑ちゃんと、け…
っと、勝手に妄想はダメだよな…。


「よく両親説得できたな?」
俺は溜め息混じりに言った。

「何回も訪ねては頭下げたっつの。大変だったよ…」
「でも認めて貰えて良かったじゃん。羨ましいな」
「お前の方が楽なんじゃね?笑愛さんのお母さんの後ろ楯ってやつがあるじゃん」

衣羽は気楽そうに言う。

「バカっ、分かってねぇな。愛樹さんがいるだろ!あの人はこえーんだよ…」
「あはっ!だって遥斗は目の敵にされてるもんな」
「…てゆうか今思ったんだけど、俺達よく週刊誌とかで報道されねぇよな?」

俺は言ってみた。

「いいことじゃん」
衣羽はニコッと笑う。

「考えなしって怖い。」
俺は思った事を呟いた。


「なーに話してるんですか?」
新メンバーの内山未来(うちやまみく)が、俺達に背後から話し掛けてきた。

「わ、何でもないよ!何でも!」
「あやしーですね。何か隠し事ですか?」
「みーくー…あんた、また遥斗先輩たちに迷惑かけるのやめなさい!」

もう一人新メンバーの後藤凛香(ごとうりか)が言う。

「迷惑だなんて…別に大丈夫だよ」
衣羽が答える。

「そういえば、Cu-luのみなさんってモテますよね?」
未来ちゃんが尋ねる。

「モテないよ。普通」
「そーそー」
「でも、白石さんは凄くモテるよ」
「男の中の男!って感じがあるからね〜」
「バカ野郎、んなことねーよ」
「灯理はね、大恋愛中!」
「私はモテないぞ」

みんなが口々に喋る中、凛香ちゃんは俺を見た。

「…な、何かな?」
俺は尋ねる。

「遥斗先輩には、大切な人が居る気がするんです」
「!」
「…居るんですね?」
「秘密だよ。アイドルには、少しくらい謎がないとね」
「さ、みんな。そろそろスタンバイだ。準備はいいな?」
「OKです!」

白石さんの言葉に新メンバーの男子たちが答える。

「俺達は、全員でCu-luだ。一人でも欠けちゃ意味がない!今日も頑張るぞ!」
「おーっ!!」



−END−
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2012年05月22日

お子様サイズの恋〜こんな恋ってアリ!?〜

Side/遥斗

−笑愛の部屋−

「ねぇ、笑ちゃん」
俺は笑ちゃんに寄った。

「何?」
「キスしていい?」

俺は笑ちゃんに真剣に言った。

「……」
笑ちゃんは黙り込んだ。

「何も言わないなら、するよ?」

俺は笑ちゃんに顔を近付ける。
抵抗もしないで、笑ちゃんは俺を見つめている。
俺は躊躇いなく笑ちゃんにキスした。


その時…。


バンッ!
とドアが開いた。

俺達は慌てて離れた。

「なぁんだ、イチャつき中か〜」
「ゆ、由梨絵!?…と、道端くん!?」

何故か由梨絵さんと衣羽が、笑ちゃんの部屋にやって来た。

「なぁにぃ〜?二人でいつもこうやってイチャイチャしてるわけ?嫌だわ〜」
由梨絵さんがニヤニヤしながら言う。


「「ちっ、違〜うっ!」」
俺と笑ちゃんはハモった。

「お、息ぴったり」
と衣羽が言う。


「…で、由梨絵さんはともかく、何で衣羽まで来てんだよ」
「ぐうぜーんっ!というやつですよ」
「死ねよ」
「嫌でーす」
「はぁ…由梨絵さんも苦労しますね、こんな彼氏持って…」
「あらぁ〜?そちらも同じ状況なんじゃないかしらぁ〜?」

由梨絵さんがクスクス笑う。

「ふはっ!そーそー!彼氏は彼氏、彼女は彼女同士で同い年だしね」
衣羽はまだ笑っている。

「うるせぇよ。」

自分と同じ趣味だと言いたいのか。
一緒にされたくねぇ。
別にどこも楽しくもねぇだろ。

「そういえば、EverlastingのグループでCD出るんでしょ?」
「あ、そういえばそうだね」

由梨絵さんと笑ちゃんが話している。

「「絶対買わなくていいから」」
俺と衣羽がハモった。

「あははっ!絶対嫌!」
由梨絵さんが満面の笑みで言った。

「だって女装だなんて…泣きたいだろ…」
衣羽が嫌そうに言う。

あ、でもその気持ち分かる。
同じ女装したメンバーの一人として。


「キツいったらねぇよ…代わりに兄貴睨み付けたけど」
「あの兄さんにはびっくりしたぜ!ホント遥斗と顔一緒だもんな」
「あいつと双子って…困る」
「何で?」

笑ちゃんが尋ねる。

「俺がただ単に、あいつと双子ってことが困るってだけだよ」
「そこまで深斗くん嫌いなの?」

笑ちゃんが尋ねる。

「嫌いって言うか…普通だけどさ。何かしっくり来ないっていうか…」
「…」

理由を知る笑ちゃんは俯いて俺の話を聞いていた。


「…ずっと離ればなれでいたんだから、急にそんな存在を『はい、そうですか』なんて受け入れられないだろ」
「離ればなれ?何でよ」

由梨絵さんが食いついてくる。

「実の両親が離婚したんだよ。俺達が一歳の時に」

「…それで引き離された、ってとこか」
衣羽は納得したように頷きながら言う。

「…俺は実の父親の存在を、許せないかも知れない…」
俺は呟いた。

「おばさん、あんなに優しくていい人なのにね…」
笑ちゃんも呟いた。

「だから知りたい。でも、母さんには聞けない。可哀想で聞けないんだ」


その時。


「母さんと父さんと養母は、三人共幼馴染みだよ」
深斗が現れた。

「!」
笑ちゃんが察したのか、俺の顔をチラッと見た。

「父さんは養母と恋に落ちて、母さんを捨てたんだ」



あ。
自分の中で何かが切れたような音がした。

気づけば拳が痛い。
俺は今、兄貴に何をした?

兄貴が頬を押さえて床に座り込んでいる。

「母さんを…母さんを捨てただなんて、よく軽く言えたもんだな!!」
俺は心の底から怒鳴った。

「…俺は実の父親を、父親だとは認めない!俺の父さんは、今の父さんだけだ!!」

「…っ…」
兄貴はフラリと立ち上がる。

「…許さない…」
俺は呟いた。

「俺は神崎の親父を許さない…!!」

「…そこまで言って…。本当に母さんが大好きなんだな、お前は…」
兄貴が呟く。

「兄貴は…深斗は母さんをどう思ってんだよ?」
「もちろん…好きだよ。本当の母さんだから、嫌いになるわけ無い…。だって俺達双子を一番大事にしてたはずだから…」


俺は頷くと、深斗の頬に氷嚢(ひょうのう)を当てた。



Side/笑愛

「はーると!起きなさい!」

私はすやすや寝ている遥斗を起こした。

「んー…あと五分…」

遥斗は寝ぼけているのか、私に抱き枕に抱き付くかのように抱き付いてきた。

「寝ぼけんのもいい加減にしなさい!今日仕事でしょ!?」

私は遥斗をどつく。

「はッ!!!今何時!?」
遥斗は飛び起きた。

「今4時。昨日、あんた私の部屋で寝ちゃって、起こしても全く起きなかったじゃない。仕方なく泊めたのよ」
「あ…」
「それに4時に起こせって言ったのはそっちよ。寝る前に言ってたわよ」

私は遥斗を睨んだ。

「…衣羽たちは?」
「昨日の夜にとっくに帰ったわよ。ほら、さっさと顔洗う!」
「…笑ちゃん」
「何よ」
「俺のマネージャーとして働かない?」
「働かないわよ!」
「残念〜」

遥斗は口を尖らせて言う。

「急がないと仕事遅れるよ」
私は遥斗を急かす。

「笑ちゃん。愛してる」
「ちょっと、真面目にー…」

遥斗は私に不意にキスした。

「ちょ…っ」

どん、と壁まで追い詰められ、逃げ場を失う。

「例え、深斗が笑ちゃんを欲しがっても、絶対渡さない」
「な…何言って…」
「いい?俺以外の男なんかに靡(なび)かないで」
「あ、当たり前じゃない。私は遥斗を好きなんだよ?」
「うん。それでいてくれなきゃ…」

遥斗の手が、私の足に触れる。

「っ…」

足に手を置いた様な…ただ触れられただけなのに、何だか手足がビリビリと痺れた様に感じる。

「笑ちゃん、覚えてて。時には俺が強いってこと。笑ちゃんは年上でも女の子。俺は年下でも男だよ。笑ちゃんの力なんて、どうにもできちゃうからね」

遥斗はそう言うと私の耳たぶにキスした。

「…っ…」
私はへなへなと床に座り込む。

「笑ちゃんっ」
遥斗が私を支えるように抱き締める。

遥斗ってこんなだったっけ?
今の遥斗は、本気で怖いぐらい男の子って感じがした。

「…やだ…やだやだやだっ!遥斗はこんなんじゃない!こんな…っ」

私は思わず遥斗を突き飛ばしてしまった。

「…」
遥斗は突然私を押し倒す。

「きゃっ!」
「こんな遥斗って…じゃあ、笑ちゃんはどんな俺なら良いの?」

手首がとんでもない力で掴まれている。
振りほどけない。

「従順な男?優しい男?強引な男?」
遥斗は怒ったように尋ねる。

「…あ…」
唇がカタカタと震えている。


何か言わなきゃ。
でも、怖い。

そう考えている内に、遥斗は私の服のボタンを外しだした。

「ちょ…っ…やめてよ…っ!正気!?」
「正気だよ。俺は笑ちゃんとこういう事考えてた」

ブーッ、ブーッ、ブーッ
遥斗の携帯が鳴った。


「あ、仕事…!電話!」
「そんなの、今はどうでもいい」

遥斗の目は完全に怒ってる。
目の前の遥斗が、違う男の人に見える。

「どうでもいいわけないじゃんっ!早く電話に…っ」

遥斗はイラっとしたように携帯の電源を切った。

「仕事より、俺は笑ちゃんが欲しい…」

遥斗が私の首筋にキスする。

「っ」
私はくすぐったくて不意にびくっとした。

「…嫌?」
遥斗が言う。

「あ…たりまえじゃない!だって、こんなの……っ」
「恥ずかしい?」
「当たり前だって!」
「でも、俺は笑ちゃんの全てが欲しいよ。恥ずかしがってるその顔も、全部見たい」
「ドS!!いっ、嫌よ!」
「ふぅん…?もっといじめたくなる」
「さ、最低!…っ!?」

遥斗の手が、ボタンの開いた私の服の中に滑り込む。

「ちょ…っ」
「抵抗が勿体無いよ?余計体力奪われちゃうんだからさ」

片手で私の自由を奪える遥斗。
更に余計に異性として意識させられる。

不意に私の目から涙が溢れた。

「っ…」

苦しい。
遥斗にこんな思いさせて。

私は彼女の資格なんてない。
遥斗の言動一つ一つが、私を苦しめてく。


私が遥斗を、そういう風にさせてしまったんだ…。
Posted at 08:40| 小説 | この記事のURL | コメント(0) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月06日

お子様サイズの恋〜こんな恋ってアリ!?〜

〜最終章〜

Side/笑愛

「…ごめん。仕事あるから帰るね」
深斗くんは私を離した。

「仕事?」
「…俺が遥斗の兄だって知った事務所がいてさ。こっちに帰ってくる前に、その事務所に俺、入ったんだ。そしたらさ…遥斗の事務所とコラボとしてのグループを作るって事務所が言うんだよ」
「…つまり、遥斗と何かするってこと?」
私は尋ねた。

「そう。知ってる?Everlastingって」
「…あ!」

遥斗が女装してるグループ!
シークレットメンバーって、深斗くんの事だったの!?

「知ってるよ!それ!」
「…俺がそのままの姿でするのに、遥斗は可哀想に女装なんだよ…んで、顔合わせ明明後日(しあさって)なんだよ…こえーよ…」
「じゃあ深斗くんもアメリカ行くの?」
「うん」

今は他のメンバーにはシークレットだから遥斗には何も知らせない方がいいよね…?
私はぐるぐると考えを巡らせていた。

「じゃあね」
深斗くんは私の頬にキスした。

「!ちょっ、何する―…」

顔を上げると、深斗くんが切なそうな顔で微笑みながら私を見ていた。

「深斗くん…?」
「おやすみ」

深斗くんは私の頭を撫でた。

「あ、おやすみ…」

突然、また私の携帯が鳴った。

「ひゃう!?」

ディスプレイに"遥斗"と表示されている。

「もっ、もしもし!?」
『あ、もしもし笑愛サ〜ン?』

完全に出たのは遥斗じゃなかった。
それは…

『灯理です〜。お久しぶりです〜』
「は…はぁ…」
『そういえば、笑愛さん。遥斗くんと別れてくれましたか?』
「…まだそんな事言ってたの?」
『はいっ!当然ですぅ〜』

へらっとした口調には、毎回イラっとくるんだけどな。

「何で遥斗の電話をあなたが使ってるの」
『だって今、遥斗くんはあたしの部屋にいるんですもん〜』

何もかもが意味不明に感じてきた。

「…切ってもいいかな?」
『どうせあたしが掛けたとしたら、あなたはすぐ切るでしょ?あ。あと、遥斗くんは落ち込んでフラフラと歩いてたから、あたしが介抱したまでですよぉ〜』
「いい加減にしてよ!」

私は怒鳴った。

「私はどう言われたって遥斗を諦めない!遥斗もそれを望んでる限り!…あなたにそんなこと言われなくても、分かってるわよ!」

『…じゃあ分かってるんだったら、遥斗くんを泣かせないで下さいよ。遥斗くん、あなたの名前ばかり呼んで泣いてるんですよ』

遥斗が…?
私の名前を呼んで?

『…聞きたくないんですよ。遥斗くんの口から別の人に対する"愛してる"なんて…』
「…っ」

胸の奥がきゅうっとなる。
きっとさっきの深斗くんの電話が、遥斗を傷付けたんだと思う。

『泣かせるなら、あたしが遥斗くんをもらいます』

そう言って電話は切れた。



−アメリカ/灯理−

「ん…笑ちゃん……」
寝言で呟く遥斗くんを見つめる。

「…あたしがそばにいるから…」
あたしは眠る遥斗くんにぴっとりとくっついた。

「どうしてあたしじゃだめなの…?あたしならずっと遥斗くんのそばにいて、泣かせたりしないのに…」

遥斗くんの端正な顔に触れる。
微かな寝息が手のひらをくすぐる。

「…あたしだけを見てよ…」

あたしは遥斗くんに顔を近付けた。

「…むっ!?」

遥斗くんが目を覚まして、あたしの口を塞いでいた。

「キス禁止。」
遥斗くんが言った。

「起きてたんだ…残念〜」
「何が残念だよ。変態」
「変態じゃないもん!灯理は遥斗くんの為を思って―…」
「俺の為を思うなら、笑ちゃんを傷付けんなって言っただろ」
「…っ」
「俺、戻るわ。世話になって悪かっ…!?」

あたしは遥斗くんをベッドに押し倒した。
抵抗出来ないように、あたしは精一杯両手首をしっかり掴んだ。

「…あたしの方が…こんなに好きなのに…!」

あたしは泣きながら遥斗くんにキスした。

「…灯…っ」
遥斗くんが呻くような声で叫ぶ。

「…灯理っ!!」
遥斗くんがあたしを引き離した。

「俺は…笑ちゃん以外の人と…キスなんかしたくねぇんだよ!!」
「…っ」
「灯理の事は好きだ。けどそれは兄弟みたいって意味なんだって、何度も言ったろ?」
「そんなの分かんないよッ!あたしはずっと遥斗くんが好きなんだもん!それの何がいけないの!?どうして笑愛さんじゃなきゃダメなの!?」
「…一番愛してるから。俺の世界の中心だからだよ」

遥斗くんはそう言うと、部屋から出ていった。


みんなみんな、片想いしてる。
両想いの人だっている。

あたしはただ一人、間の溝に落っこちて、抜け出せないでいる。

遥斗くんと笑愛さんは前に進んでいこうとしてるのに、あたしだけは止まったままだ。

どうしたらこの痛みは、誰に分かってもらえるんだろうか?
こんな痛みを取り除く薬があるなら、欲しいくらい。



Side/深斗

−あれから4ヶ月が経った。

Everlastingのメンバー公開も終えて、今度はツアーが企画されているらしい。

もちろんメンバー顔合わせの時には、物凄く遥斗に睨まれてしまった。


「…兄貴。話あんだけど」
すっかりメイクも格好も直したいつもの遥斗がやって来て言った。

−公園−

「兄貴。俺がアメリカに居たとき、笑ちゃんに何もしてないよな?」

遥斗が単刀直入に言った。

「何も…って、ちょっと抱き締めたりしたけど…」
「はぁあっ!?」
「耳痛ぇって!!」
「抱き締めたって何だよ!?まさか、変な事したんじゃ…っ!?」
「してないよ〜。あ、でもほっぺたにチューしちゃった〜」
「…コロス…」
「あ〜そんな怒んなよぉ〜。挨拶みたいなもんだよ」
「挨拶だと…?お前はアメリカ人か?」
「ち、違うけど…」

遥斗の目は怒りに満ちている。

「だったら、何で笑ちゃんは泣いてたんだよ?」
遥斗が俺に問う。

「…ただ普通に喋ってて、感動する話しただけだよ」
「感動する話?」

遥斗が疑いの眼差しを俺に向ける。
どうせ下らない話だろ、とでも言いたいような顔で俺を見る。

「そんなに真実が聞きたいなら、恋人本人に聞きゃあ良いだろ〜」
「聞けないから、兄貴に聞いてんだろ」

遥斗はどうしても俺を疑っている。

「だったら、今から笑愛ちゃんに電話してやるよ」
「!?…番号知ってんのか?」
「当たり前だよ」

ダンッ!!
遥斗が俺を柱に押し付けてきた。
勢いで変装用のメガネが落ちた。

「いって…っ」
俺は遥斗に言った。

「…余計なことすんな」
遥斗は低い声で言った。

「ねぇ!あれって、Cu-luの遥斗くんじゃないっ!?」
「え、うそぉ〜っ!!」

俺達は慌てて離れた。

まずい…バレたのか?
ていうか、顔一緒だからな…。

俺達はとりあえず、その場から慌てて逃げる事にした。
Posted at 10:01| 小説 | この記事のURL | コメント(0) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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