2010年05月12日

エドワード・バーン=ジョーンズ  ヴィーナス巡り


ウェヌス・コンコルディア バーン=ジョーンズ Edward Burne-Jones (一般図書引用)


ペレウスの祝宴 エドワード・バーン=ジョーンズ Edward Burne-Jones (一般図書引用)
1872-81 バーミンガム博物館&美術館

文学でも絵画でも古典好きな方なら、もうおわかりでしょ。三美神、林檎を手にしているヴィーナスの勝利が描かれているとすると「パリスの審判」だ。

だがタイトルは、「ウェヌス・コンコルディア(調和のヴィーナス)」である。ここに描かれている「三美神」に注目。

そして2枚目が、この林檎を手にする競争の発端となった英雄ペレウスと海の女神テティスの婚宴だ。そして次の油彩画に、プレデッタのようにこの作品が描かれている。

この「ペアレスの祝宴」は2枚のバージョンがある。


ペレウスの祝宴 エドワード・バーン=ジョーンズ Edward Burne-Jones
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館 (ポスター画像)

この下の作品は、「トロイの三連画」(1872-98)のエドワード・バーン=ジョーンズの作品で、バーミンガム博物館&美術館の所蔵。

記事「アエネーイスから アイネイアースと母ヴィーナス

次の三連画のプレデッタ部分の中央に描かれている作品と、その下の作品はポスターでも手に入る。

エドワード・バーン=ジョーンズは、ファースト・バージョン、セカンド・バージョンと同タイトルでおなじ構図で何枚も制作しているのは「クピドとプシュケ」の「プシュケをみつけたクピド」、「プシュケをはこぶクピド」などのほか、「ヴィーナス」だ。

「鏡のヴィーナス」と同じように、この「ペレウスの祝宴」でも衣装を身につけているヴィーナスと裸体のヴィーナスに描き分けている。


「トロイの三連画」(部分) 1872-98 エドワード・バーン=ジョーンズ (ポスター画像)
Troy Triptych (1872-98), Birmingham Museum & Art Gallery Edward Burne-Jones

バーン=ジョーンズが亡くなったために未完成のままの作品。プレデッタ部分に描かれた右側の「ヴィーナスの闘争」の描画が終了したものがウェールズに、油彩が カーディフ の 博物館&アートギャラリーにあるらしい。

左部分がいちばん最初の「調和するヴィーナス(あるいはヴィーナスの調和)」、中央に「ペレウスの祝宴」、そしてつぎに紹介する作品「ヴィーナスの闘争」となっている。

追記
記事 エドワード・バーン=ジョーンズ 7枚の運命の女神の車輪

TBどーもっ!
alei が僕のこの記事からバーン=ジョーンズのワッツ・ギャラリー所蔵の「運命の女神の車輪」の連作で、「愛の勝利」がこの3枚のプレデッタ部分をはさんでるって記事。言われてみれば・・・。
左から「運命の女神の車輪」、「調和のヴィーナス」、「名誉」、「ペレウスの祝宴」、「忘却」、「ヴィーナスの闘争」、そして「愛」が描かれているってこと。よくわかったね!


「三美神」 1890-1896 エドワード・バーン=ジョーンズ
(一般美術書より)
この三美神が、最初の「調和するヴィーナス」に描かれているが、比較すると左右の「愛欲」と「美」が入れ替わっている。

三美神についての説明はこちら
記事 三美神 Yves Saint-Laurent

トロイ・トリプティック(トロイの三連画)は1872-98年の26年の間で制作がすすめられてきた。この人20年以上かけてつくる作品が結構多い。建築物と比べても、はるかに長い。

三美神のドローイングは1890年頃からだから、もしかするとこの「三美神」の素描が下地になった「調和のヴィーナス」かと思われる。


Drawing ヴィーナスの闘争 ウェールズ国立博物館蔵
Oil ヴィーナスの闘争 カーディフ 博物館&アートギャラリー
エドワード・バーン=ジョーンズ (ポスター画像)

ヴィーナスはキリスト教の四悪徳と格闘する。右に震えているような女性4人が悪徳なんだろうか。闘争しているのは男性だけれど。

「凍えるヴィーナス」というタイトルがあるが「凍える四悪徳」というところだろうか。

画面から見る限り、ヴィーナスに分がありそうだ。戦う悪徳は「怒り」、「妬み」、「疑い」、「争い」。

実はこの「ヴィーナスの闘争」はトロイア戦争の原因となった「ヘレーネーの略奪」のシーンである。先に紹介した記事「アエネーイスから アイネイアースと母ヴィーナス」で、ヘレネーの略奪について、最後に触れていたのでそこから参考に。


海からあがるヴィーナス エドワード・バーン=ジョーンズ (ポスター画像)

ヴィーナスはパリスの審判で「パリスに世界一の美女を贈る」と耳打ちし、美の審判で勝利を得た。それがトロイア戦争の発端になるし、ほかにはヴィーナスがプシュケの美に嫉妬し、エロスに醜い男を恋するよう矢を打てと命じたり、そのエロスがプシュケに恋するとお姑根性で、プシュケに難題をもちかける。

わりとトラブルメーカーだったりするが、たまに優しいところもあるようだ。僕の以前の記事で「「ピグマリオンとガラテア」の話しを記事にしたことがある。その彫刻家ピグマリオンが自分のつくった彫刻のガラテアに恋をし、ヴィーナスがガラテアに命を授けるという話し。
過去記事 「ガラテア」
関連記事 楓の「ガラテア」
それが次の4作品の連作となる。



「ピグマリオン」 セカンドヴァージョン 1878年 (ポスター画像) 写真画像はこちらから
エドワード・バーン=ジョーンズ バーミンガム・ミュージアム・アンド・アートギャラリー

ファーストヴァージョンの連作もセカンドヴァージョンの連作もほとんど同じようだが、ヴィーナスの衣などに変化がある。ファーストヴァージョンは個人所蔵。ビーナスは第三場面に描かれている。

ファースト、セカンドともにシーンも同じで、第一場面「高まる心」、第ニ場面「ためらう手」、第三場面「命を与えた女神」、第四場面「与えられた命」となる。

ちなみにこうしたシリーズ化した作品はたくさんある。
シリーズ作品記事「バーン=ジョーンズ 聖ゲオルギウスの伝説


「ピグマリオン」 ファーストヴァージョン 1868-70年 (ポスター画像)
エドワード・バーン=ジョーンズ  個人所蔵

さてピグマリオンのセカンドヴァージョンのあとすぐに手がけたのがこのテキストにリンクした作品。

クリックして画像をみてください。Click Here! 
通り過ぎるヴィーナス(あるいはヴィーナスの死)1880ー98
オックスフォード大学の学生コモンルームの装飾らしい。(The Passing of Venus. c. 1875. Oil on panel. The Junior Common Room, Exeter College, Oxford, UK)
大理石、スフィンクスを削ったような石、大理石?の丘だろうか・・・、「ヴェーヌスベルク」だ。ヴィーナス(ウェヌス)の洞窟だ。・・・タンホイザーかな。

バーン=ジョーンズがピグマリオンを制作する40年前には、タンホイザー伝説から、ワグナーがオペラを作曲した。世俗(愛欲)と天上の二柱のヴィーナスはプラトンの「饗宴」でも語られているように、愛欲の女神ヴィーナスとの官能的な生活に、タンホイザーはあるとき強い意志で帰国をする。

そうするとヴェーヌスベルクは消滅するのだ。原題は「The Passing of Venus 」だ。通り過ぎるヴィーナスは直訳だけれど、「死」を意味する言葉でもある。「ヴィーナスの死」、あるいは空虚なこころかも。

さてここには娘たちと婦人がいる。恐れおののいているようにも、ものめずらしさに遠巻きから眺めているような気配もする。悪徳の女の顔をわざわざ見にきたのかもしれない。




ウェヌス・エピタラミア(祝婚歌のウェヌス) 1871年 (ポスター画像)
セカンドバージョン エドワード・バーン=ジョーンズ 

ポスターで、3色くらい色が違うものが販売されている。本当に実際のものを見てみたい。

ウェヌス・エピタラミアについては下記記事から。色違いのポスター画像。
記事 エドワード・バーン=ジョーンズ ウェヌス・エピタラミア(祝婚歌のウェヌス)

エドワード・バーン=ジョーンズ ヴィーナス関連記事
記事エドワード・バーン=ジョーンズ ヴィーナス賛歌
記事 エドワード・バーン=ジョーンズ 「ヴィーナスの誕生」

ヴィーナスほどではないが、エドワード・バーン=ジョーンズは「ダナエ」も何枚か描いている。下記記事ではポスターと写真の両方を掲載していて、その違いがはっきりした。

記事「エドワード・バーン=ジョーンズ ダナエ Danae by Edward Burne-Jones

さまざまなサイトでエドワード・バーン=ジョーンズの作品画像をアップしているし、安価な一般美術書などからも鑑賞できるが、本当にその掲載画像で好きになれるのかな。

僕は基本的にエドワード・バーン=ジョーンズは好きではないが、本物を鑑賞したことがある。好みはあるけれど、ネットや美術書の作品画像なんか比べられない。

本物を鑑賞してしまうと、この人の記事が書けない。やっぱり画像をみてもらたいし。そうかといって色や線が違いすぎるし。どの時代のどの画家の作品ももちろんそうだけど、特にラファエル前派はかなりダメージを受けるのが残念。
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