おそろいのデキャンタ
このアンティークなデキャンタをお揃いで持つ二つの作品。クラナッハ(子)が別々な作品に同じアトリビュートを描いているのが、この時代の日常的なものなのか、あるいは宗教的な意味を持つのかわからないけれど、中身はワイン。
まず一作目はこちら。左側の「バールでの預言者エリヤ」だ。
Lucas Cranach II (Lucas Cranach der Jungere)
Elie et les pretres de Baal 1545 Allemagne, Dresde, Gemaldegalerie Alte Meister, Staatliche
Elie et les pretres de Baal 1545 Allemagne, Dresde, Gemaldegalerie Alte Meister, Staatliche
「バールでの預言者エリヤ」は、バール信仰(バアル信仰)の預言者にエリヤが競い勝利する話だ。
制作した1545年に、トリエント公会議がはじめられた。ルターが要求していた19回目の公会議だ。カトリックは聖餐を「聖体の秘跡」といい、キリストの肉をパンに見立て、キリストの血をワインに見立てている。ルターのプロテスタントでは秘蹟という言葉は使わず「聖餐式」と呼ぶ。
その「秘跡」(七つの秘跡)はトリエント公会議で、「聖書のみ」というルターの主張によって検討されることになる。
勝利する預言者エリヤをルターに見立てたのか、無教会主義者のエリヤをルターに見立てたのか、そうした寓意があるならクラナッハ(子)もなかなかである。
さて、ニ作品目のデキャンタを持つ男。後ろ向きに立ち、ワインを注いでいるのは・・・。画家ルーカス・クラナッハ(子)自身である。メディチ家のボッティチェッリもベノッツォ・ゴッツォリも自画像を作品中に描きこんでるのも有名。
その自画像が描かれているベノッツォ・ゴッツォリのメディチ・リッカルディ宮殿に描いた「ベツレヘムに向かう三賢王(東方三博士)」(東方三博士のベツレヘムへの旅 1459 - 1461)には、フェラーラ・フィレンツェ公会議(1439年)を象徴するヨハネス8世も描かれている。
Lucas Cranach II (Lucas Cranach der Jungere)
Leading Reformers portrayed as the Apostles, and the Elector of Saxony kneeling.
Leading Reformers portrayed as the Apostles, and the Elector of Saxony kneeling.
跪くのはザクセン選帝侯。キリストを囲んでいるのは、マルティン ・ ルターと宗教改革の人々。彼らが使徒として描かれている。キリストの左にはルター。右にはフィリップ ・ メランヒトン、他にはヨハネス・ブーゲンハーゲンなどクラナッハ(父)、(子)にわたって、肖像画に描かれた人々が中心。
過去記事 ルーカス・クラナッハ(子)+(父) Lucas Cranach the Younger +Elder 宗教画と肖像画編
さて、この「最後の晩餐」が描かれたのはヨアヒム・エルンスト ( アンハルト侯)の墓碑銘だ。
クラナッハ(父)の 聖マリーエン教会(ヴィッテンベルグ)の祭壇画中央が「最後の晩餐」だった。この「最後の晩餐」にもワインを注いでまわる男性が描かれていた。
記事 ルーカス・クラナッハ(父) 祭壇画 Altar by Lucas Cranach der Altere
僕のクラナッハ(子)の作品記事も含めて、XAIからクラナッハ父子の各作品をご覧あれ。
XAI クラナッハ 三位一体と死んだ男 →死ぬ男 (直訳で死ぬ男よりも「男の死」がいいのでは? saiくんよ。)