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2008年09月26日

トウキョウソナタ

 今回は、黒沢清監督に2008年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門 審査員賞受賞作『トウキョウソナタ』について語っていただきました。

 今回、家族の物語を描こうと思ったのは、ホラーを何本も続けて撮っていたので、もうネタが切れたというのもあるんですけど(笑)、いつかまたホラーを作るために、一度、それとはかけ離れたものを作りたいと思っていたんです。ただ、最初から家族の物語を描こうと思っていたわけではないんですけど・・・。

 ホームドラマというと、どうしても夫婦、兄弟、親子など身近な人との問題に目がいってしまいがちじゃないですか。でも、本当は、家の中にだけに人がいるわけではなく、学校や職場などいろんな場所で巨大な問題にぶち当たりながら家庭に戻ってきているんです。だから、それを両方の面から描いたらすごくおもしろいんじゃないかなって。

 撮影にあたり意識したのは、家族の“誰か”が主役ということではなく、4人それぞれのドラマを均等に描くということ。長男は、視野が外側(社会と自分との関係)に向かって突き進んでいくのに対して、母親は限りなく自分の内面(自分の存在価値)に向かっていく。その中間的な部分に父親と次男がいるみたいな。そのバランスを取るのが一番難しかったですね。



 なかでも“お母さん”は、家族の要というか、ほかの家族が抱えるいろんな問題を家庭の中で和らげる役目なんです。でも、その役割を与えられてしまった当人は大変ですよね。自分が“母親”をやっているときは、家族がなんとなく結び付いているけど、自分の存在価値がそこにしかないとなると、「私って何?」ってなってしまう。僕自身、その問題をどうやって解決すればいいのかはわからないのですが、作品の後半で小泉今日子さんが言っているように「自分は一人しかいない」っていう客観的な事実に気づくことが正解に一番近いんじゃないかなと。母親であることを辞めて、もう1回自分を見つめなおすというか。

 人と人の繋がりのなかで大切なことは、相手の目をジッと見て、そこから出ている音をジッと聞くことだと思います。それは、言葉かもしれないし、その人が弾いているピアノの音色かもしれないんですけど。この作品でもそうですが、無理矢理会話を試みようとすると、大抵失敗して「言わなきゃよかった」「まだ隠していたほうがよかった」ってなってしまうので、とにかくジッと見つめ、ジッと聞き入る。これが人間関係の第一歩じゃないかなと。

 年令や趣味、性別も違う4人が織り成す家族模様。きっと、みなさんも誰かに共感することが出来るかなと。それをキッカケに少しでも作品を楽しんでもらえればと思います。

【今回紹介した作品】
『トウキョウソナタ』
2008年9月27日(土)恵比寿ガーデンシネマほか全国ロードショー

≪STORY≫
ごく普通に生活していたはずなのに、いつのまにか、ばらばらの不協和音しか奏でられなくなった家族が、もう一度一緒にひとつの旋律を鳴らせる日は来るのだろうか。リアルで、シニカル。だけど、あたたかい。家族のつながりを見つめなおすことのできる感動のドラマ。

(C)2008 Fortissimo Films/「TOKYO SONATA」製作委員会


【黒沢清監督プロフィール】
1955年、兵庫県生まれ。
立教大学在学中より8mm映画を撮り始め、『しがらみ学園』で1980年度 ぴあフィルム・フェスティバルの入賞を果たす。
『CURE キュア』『叫』など、圧倒的な作品力で世界中から大きな注目を浴びている。

【関連作品】
CURE キュア [DVD]
角川書店

叫 プレミアム・エディション [DVD]
AVEX GROUP HOLDINGS.(ADI)(D)

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