中古パソコン市場が拡大する中で、OSを搭載していない中古パソコンを購入したユーザーが、不正コピー版のOSを導入するケースが後を絶たないため、正規版のOSを安価で提供することで、市場の健全な発展につなげようというのが狙いだ。
ちなみに、中古パソコンに関連する企業が加盟する一般社団法人 中古情報機器協会(RITEA)の調査によると、国内での中古パソコンの年間販売台数は158万9000台(2007年度実績)。前年度比30%増の成長市場だが、そのうち7割はOSを搭載していない形で流通されているという。
同日の記者会見で説明に立ったマイクロソフトの伊藤ゆみ子 執行役 法務・政策企画統括本部 統括本部長は、「不正コピーは違法であるとともに、中には偽造品を利用したことでマルウェアなどの被害に遭うケースもある。MARプログラムではユーザーをそうした脅威から保護し、Windows本来の機能やサービスを活用できるようにした」と強調した。
また、「中古パソコンの流通が活性化することにより、廃棄物発生抑制やCO2排出削減などの環境・循環型社会への貢献につながる」(伊藤 執行役)ことも重要なポイントとしてあげた。
続いて説明に立ったマイクロソフトの中川哲コマーシャルWindows本部 本部長はMARプログラムについてこう語った。
「中古パソコンの多くは、新品として出荷されたときには正規のWindows OSライセンスが提供されていた。その元々のライセンスが失効したわけではないが、リカバリメディアが紛失・破損しているケースもある。MARプログラムは、一定条件を満たした事業者から出荷されるそうした中古パソコンに対し、Windows OSのセカンダリライセンスを提供する施策だ」
そのため、ライセンス料についても「リカバリメディアや流通にかかるコストなどの実費程度」としている。
MARプログラムに参加した事業者は、アンカーネットワークサービス、川上キカイ、ソフマップ、ティーズフューチャー、デジタルリソース、東電環境エンジニアリング、パソフィックネット、ブロードリンク、ヤマダ電機の9社。これらの事業者から、先週25日に正規Windows OSを搭載した中古パソコンが販売開始された。
中古パソコンといえば、個人向けが中心と見られがちだが、業界関係者の間では企業向けにも大きな期待を寄せている。今回のマイクロソフトの施策が、その大きな弾みとなるかもしれない。
●新施策が企業ユースの弾みに
マイクロソフトの中川本部長に続いて挨拶に立ったRITEAの小澤昇 常務理事・事務局長は、「MARプログラムによって、Windows OS搭載済みの中古パソコンが数多く出回り、購入者が増えて市場が広がるだろう」と期待を込めて語った。
さらに小澤常務理事は、「2007年度の販売実績で158万9000台だった中古パソコンを、新規に製造した場合のCO2排出量と比べると、19万1000トンを削減することができる。これは太さ30cmの樹木が1年間に吸収するCO2の量として、123万3000本にあたる規模となる」と、環境対策への中古パソコンの効果を説明した。
安心、安価で環境にも優しいとなれば、個人のみならず、企業にとっても利用価値がありそうだ。中古パソコンの事情にも詳しい業界関係者が、今の状況をこう分析する。
「昨今の厳しい経済情勢の中で、安心して安く導入できるというのは、企業にとって魅力的なはず。しかも環境に優しいとあれば、なおさらだ。とりわけ今回のマイクロソフトの施策は、中古パソコンに対して同社がOSを保証する仕組みをつくったわけで、企業ユーザーの不安感を払拭するのに大きな材料となるだろう」
そしてこう続けた。「企業のクライアント環境における更新は、Windows 7の登場待ちといったところが多いが、XPを搭載した中古パソコンは次なる更新へ向けて、つなぎ役を果たすニーズが予想以上に出てくるのではないか。中古パソコンは安定的に調達するのが難しいが、そこの流通の仕組みが整ってくれば、企業向けビジネスが一定の規模に膨らむ可能性は大きい」
企業向けにしても個人向けにしても、今回のマイクロソフトの施策によって、パソコン市場にネットブックなどと同様、「中古パソコン」という1つの新しいジャンルが本格的に選択肢に加わった格好ではないだろうか。
そろそろ「中古パソコン」(マイクロソフトが使う「再生PC」も同じ)という呼称を、もっと親しみを感じる愛称に変えたほうがいいかもしれない。