高円寺の商店街に、お酒を飲みにゆく。待ち合わせの店にいこうと、ぶらぶら歩く。長い商店街である。どこまで行っても、終わりがない。歩いているうちにも、商店街はますます複雑になってくる。道はひどく曲がりくねり、枝わかれし、きりたった崖のような場所に出たかと思えば、商店の間から突然海が見え、それならば海をめざそうと思ってそちらに行くと、今はもう使用していない道にはばまれて迂回を余儀なくされ、そのまま大きくまわりこむと、また駅前に戻ってしまう。二時間ほど歩いたけれど、結局店をみつけることができなかった。しかたなく、駅の改札近くに置いてある記念スタンプを手の甲に押して(紙は持っていなかった)、とぼとぼ帰る。 (『東京日記 卵一個ぶんのお祝い。』川上弘美・著 平凡社・刊より)
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