ヒットプロデューサーであり、東京事変のベーシストとしても活躍する亀田誠治氏が、制作現場で起きる問題点や出来事を、鋭くも温かな視点で分析する、短期集中連載コラム。

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「音楽と音楽ビジネスを心から愛す」〜僕が影響を受けたプロデューサー達 
ポジティブ精神の塊のようなクインシー・ジョーンズ

 まず初めに、少年時代の僕が生粋のヒットチャートマニアであったことをご報告せねばなりません。週末は、湯川れい子さんの『全米TOP40』(ラジオ関東)とケーシー・ケイサムの『AMERICAN TOP40』(FEN)でチャートをチェキるのが僕のおつとめ…。そのチャートをもとに、FM亀田(※1)で「FM亀田オリジナルチャート」を作成!平日はウルフマン・ジャック、チャーリー・ツナ、メアリー・ターナー(ともにFEN)でR&Bやロックのクラシックスをお勉強。お小遣いが貯まれば、新宿の輸入レコード店へ…、というわけで、僕が一番影響された「音楽」は、チャートに登場するヒット曲なのかも。まずは時代を彩ったヒット曲に感謝!
 じゃ、影響を受けた「プロデューサー」は誰?って話。クインシー・ジョーンズは横綱だなぁ。『クインシー・ジョーンズ自叙伝』(河出書房新社刊)は僕のバイブルです。彼は、その生い立ち〜貧困と人種差別〜という逆境を全てプラスに転換させた、ポジティブ精神の塊のような人。ミュージシャン、アレンジャーとしての非凡な才能と<USA for AFRICA>(「We Are The World」)でみせたオーガナイズ力。全米が彼のひと声で動き、その作品が世界に羽ばたいていく。今でこそ、チャートの中心はブラックミュージックですが、その地位とクオリティーが飛躍的に向上したのは彼の力があってこそ。彼が実践し貫いた「クリエイティブとビジネスは共存できる」という哲学は、今も僕の心に息づいています。
 そしてもう一人はデビッド・フォスター。彼のスゴさは、シカゴ、ホール&オーツ、アース・ウインド&ファイアーといった大スターを、時代にフィットした新しい音に“バージョンアップ”させたこと。ホイットニー・ヒューストンが映画『ボディガード』で歌った大バラード「エンダぁ〜〜〜〜」も彼のプロデュース。世知辛いシーンにアーティストが揉まれる度に、守りに入らず、「生まれ変わる」道を選ぶ。その「攻め」のプロデュースワークに、僕はスタジオでの「タフな精神力」を教わりました。以前、彼が「どんなに細心の注意を払ってもヒット作を作ることは難しい…。僕は1日15時間、音楽に没頭する生活を15年間続けてきただけだ…」と言っていました。勇気の湧く言葉です!

共通するのは「音楽と音楽ビジネスを心から愛している」こと

 ドン・ウォズも大好き。彼には「曲」を大切にする精神を教わりました。グラミーを勝ち取ったボニー・レイットのアルバム『ニック・オブ・タイム』を作るに際して、500曲(!)の中から選曲したんですって。また、『リズム・カントリー&ブルース』(※2)で見せる彼のプロデュースワークから、ルーツミュージックへの愛情と深いリスペクトが、素晴らしい音楽を生むことを教わりました。溜池の東芝3st.のミキシング・コンソールには、ドンが走り書きしたサインが残っています。そのサインにこっそり手を当て、明日の自分を夢見るのが僕のヒミツの儀式です。
 ジャム&ルイスは、音楽的に一番影響をうけたプロデューサーかもしれません。その洗練されたコードワークが大好き!R&Bを洗練されたポップスの領域に持ち上げたのは、間違いなく彼ら。Jジャクソンというホームグラウンドを20年にも亘って大切にしている姿勢も素敵です。そんな彼らとは3年前に、『オリジナルコンフィデンス』誌のインタビュー(03.10/13号)でお会いすることができました。音楽への愛情、成功への真摯な姿勢…、ジェントルなお二人の温かくて分厚い手の感触が未だに忘れられません。
 日本人のプロデューサーでは、小林武史さんのプロデュース作品からたくさんの勇気を頂きました。また、昨年、今年と「ap bank fes」でご一緒して、音楽プロデューサーの枠に止まらず、これからの人類が向き合うべき環境問題に正面から向き合うその姿勢に大変感銘を受けました。松尾潔さんも、いつも僕に刺激を与えてくれます。とにかくネットワークが広く、フットワークが軽い。J-POPと洋楽の両方に精通し、幅広いブレーンでジャンルや世代を超えて、J-POPの品質向上に日夜尽力するプロデューススタイルは松尾さん独自のもの。 駆け出しの頃の僕は、武部聡志さんから「譜面は前もって書く」「遅刻しない」「言い訳しない」等、プロとしての姿勢を吸収させて頂きました。当時、武部プロデュース、亀田アレンジで幾つか仕事をしましたが、打合せでは「亀ちゃん、バッチリにしておいて!」それだけ…。でも、そのバッチリを追究した先に、今の僕があるのです。感謝!感謝!
 まだまだ、紹介したい人はたくさんいるけれど、今日はこれまで。ここで挙げた皆さんに共通するのは「音楽と音楽ビジネスを心から愛している」ということ。やっぱ、愛がなくちゃね!

※1:「FM亀田」は、亀田少年が自室で選曲、DJ、リスナーの一人三役をこなしたプライベートFMです。

※2:ドン企画のコンピアルバム。ヴィンス・ギルとグラディス・ナイトのデュエットといった、アメリカのルーツミュージックであるカントリーとR&Bがクロスオーバーする瞬間。ドキュメントビデオが最高!

Posted at 11:13 | この記事のURL | Clip!!

亀田 誠治プロフィール
1964年、N.Y.生まれ。幼少の頃よりクラシックギター、ピアノなどを学び14才でベースを弾き始める。88年頃より、アレンジャー・プロデューサーとしての活動を始める。最近では椎名林檎、スピッツ、平井堅、Do As Infinity、クラムボン、PUFFY、175R、スガシカオ、平原綾香、山嵐等のアーティストのプロデュース&アレンジを手がける。それぞれのアーティストの長所を引き出す「いいとこどり」が得意。ビートルズと太宰治と赤塚不二夫をこよなく愛す42才。
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