ヒットプロデューサーであり、東京事変のベーシストとしても活躍する亀田誠治氏が、制作現場で起きる問題点や出来事を、鋭くも温かな視点で分析する、短期集中連載コラム。

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亀田流オリジナリティの判断基準 
オリジナリティを形成する「声」「曲」「顔」

 オーディションの時、我々プロはどんなところを見ているのでしょう? 例えば一昨々年、映画『BEAT KIDS』では、塩屋俊監督は映画監督の目線から、亀田は音楽プロデューサーの目線から、それぞれの判断基準で出演者を厳選していきました。01年の『ASAYAN』では、笹路正徳さん、島野聡さん、久保こーじさんと僕の4人のプロデューサーが、それぞれのブレイク哲学をもとに歌姫を選出。このように目的や審査員のキャラによっても、判断基準(=ふるいのかけ方)は変わります。そんなわけでここに紹介する判断基準は、あくまでも“亀田誠治”が審査する場合のお話です。
 ズバリ言いましょう!僕の場合は「声」「曲」「顔」この3点しか見ていません。なぜならば、これこそがアーティストのオリジナリティを形成する3大要素だからです。
 その中でも一番重要視するのは「声」。何千人もの応募者の中から、唯一無二の歌声の持ち主に出会えた時は、嬉しくて天にも昇る気持ちになります。宅録技術が進んだ昨今、「歌の上手さ」はアマチュア機材でも機械的にフォローできてしまいます。でもこの「声」の部分は、どんなに頑張っても作り出すことのできないものなのです。
 その次が「曲」。オリジナリティのある曲が書けるアーティストは金の卵です。「インパクトのある曲」を書く個性派パターンと「懐かしさを感じる曲」を書く王道パターン、このどちらかを満たしていないと、リリースやキャンペーンに追われるアーティスト活動に耐え得るスタミナが持続できません。そして「いい曲が書ける」=「セルフプロデュース能力がある」ということ。たとえ「声」がピカイチではなくても「将来的には名プロデューサーになるかもしれない」、「チャンスがあれば他のアーティストに曲を書かせてみようかな」、と思わずチェックしちゃいます。
 最後が「顔」。「タレントのオーディションじゃあるまいし顔なんて関係ないじゃん」なんて言うことなかれ。アーティストは「伝えて」なんぼ。リアルに生きて、リアルにメッセージを発信するアーティストは、等身大の素晴らしい表情をしているもの。演出やオトナの入れ知恵では作り出せない “素”のパフォーマンスにこそリアリティが息づいています。そこから新しい時代の“求心力”が生まれるのです。

アーティストは作品が全て。作品に対する全責任は自分に

 「結局亀田サンはボーカリストのことしか見ていないの?」なんて指摘されそうだけど、そんなことはないです。例えば、そのリズム隊にしか出せないグルーヴのあるバンドなんて絶対“買い”だし、作曲やアレンジのキーマンを見抜く事も大切。地味でも堅実な“プレイヤー気質”の若者だって大切な人材です。思い起こせば、僕自身がアマチュア時代から究極の裏方。曲書いて、アレンジして、デモ作って、応募要項に記入してテープを送って…、全部僕がやっていたのに、デビューしたのはボーカルの子だけ。「“亀山”君も、アソビにくれば?」なんてディレクターに言われて、ほんと悔しかった!だから裏方の気持ちはスゴくわかるんだ。でも、あの頃、必死にデモを作り、何度も何度も悔しい思いをしたことが、今の仕事に十分活かされているのです。
 審査員をしていて一番困るのが、「何かワンポイントアドバイスを!」みたいな即席コメントを求められちゃうこと。オーディションはワークショップじゃないっつーの。基本的に僕は、自分が手がけているアーティスト以外にアドバイスは致しません。だって僕のひと言で、無責任に若い才能の未来を左右するなんて許されないもの。だからどうしても「諦めるな」「思い切りやれ」みたいな体育会系のアドバイスになっちゃうんです。でもね、「締め切りギリギリだったので音質がちょっと」とか「風邪引いちゃっていてノドの調子が…」みたいな“言い訳”するやつはメッタ切りにするよ〜。アーティストは作品が全て。「カンペキ!オレ最高!」って自分が思っていないものを人に伝えちゃダメ。たとえ調子の悪い時にも全力のパフォーマンスで聴く人に何かを残す。それが真の才能なのです。

オーディションのグランプリはゴールではなくスタートライン

 オーディションの難儀なところは、「グランプリ=最優秀者」を決めなければならないところ。皆で選んだ最大公約数のアーティストが、商業的に成功するとは限りません。長く愛され、第一線で活躍するアーティストが必ずしもグランプリ受賞者ではない、という矛盾はここから生まれます。
 最後に、グランプリはゴールではなく、あくまでもスタートラインです。その先の“のびしろ”は不断の努力と、運(引きの強さ)にかかっています。しかも“のびしろ”は育てる人の愛情があって初めて伸びるもの。「こいつを絶対売ってやる!」という、スタッフの愛情の深さはどんな賞よりも有効であることは言うまでもありません。

Posted at 11:11 | この記事のURL | Clip!!

亀田 誠治プロフィール
1964年、N.Y.生まれ。幼少の頃よりクラシックギター、ピアノなどを学び14才でベースを弾き始める。88年頃より、アレンジャー・プロデューサーとしての活動を始める。最近では椎名林檎、スピッツ、平井堅、Do As Infinity、クラムボン、PUFFY、175R、スガシカオ、平原綾香、山嵐等のアーティストのプロデュース&アレンジを手がける。それぞれのアーティストの長所を引き出す「いいとこどり」が得意。ビートルズと太宰治と赤塚不二夫をこよなく愛す42才。
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