
ユキちゃんとは1時間近く電話をしたのだが、なにを話したのかは覚えていなかった。1時間、ユキちゃんと話をして2時間ベッドに座ってボ〜ッとしていた。
音楽も聴かなければ、煙草も吸わなかった。テレビもついていない薄暗い静かな部屋でユキちゃんのことを考えていた。
ユキちゃんとつきあえたら……でも、つきあうってどういうことなんだろう? それがオイラにはわからなかった。
一緒に映画を観て、食事をして、それから、ええと……。
ユキちゃんはオイラのことをどう思っているのだろうか。電話をしてくるということは嫌いではないはずだ。
いや、むしろ好感を持ってくれているとカン違いしてもいい。でも、会話はほとんどバンドの話ばかり。
オイラはアパートの前のゴミ収集所から拾ってきた姿見にうつった自分を見た。背は低いし、顔も気持ち悪い。
髪の毛は傷んでいるし、歯並びも悪い。こんな自分をユキちゃんが好きになってくれるはずがない。オイラは落ち込んだ。
煙草を1本吸い、部屋の電気を消して布団にくるまって眠ることにした。明日もバイトだ。睡眠を取らないといけない。
でも、まったく眠れそうになかった。
ベッドからむくりと起き上がり、押し入れの中から適当な雑誌を取り出しオナニーをした。射精をすれば眠くなると思ったからだ。
でも、一向に眠気は訪れることはなかった。今日はダメそうだな、とオイラは思った。
久しぶりにベッド横の雨戸を開けて、部屋の空気を入れ換えた。
部屋がビックリしているのがわかった。
窓を閉め、天井を見つめながらオイラは朝を迎え、身支度をしてバイトへと出かけた。